初の夫婦講師による11時間目。太良町の農家・安東浩太郎さん、美由紀さん夫妻がひな祭りの日にふさわしく、そろってひな壇に登場しました!『A-noker』という名でアスパラガスを全国に出荷、注文から納品まで最大半年待ちという人気を誇るブランド『森のアスパラ』を手がけるお二人。今や佐賀若手農業界のカリスマと呼ばれ、技術指導で海外にも出向く浩太郎さん。講座ではまず、脱サラして太良町に移住、就農わずか5年で最高品質のアスパラガスを出荷できるようになるまでの物語を語っていただきました。
感覚派の浩太郎さんと理論派の美由紀さん。大阪の不動産会社に勤めていた夫妻ですが、浩太郎さんが美由紀さんの地元・太良町に訪れた際、町に一目ぼれ!子どもの頃は町が嫌いで、戻らない覚悟で町を出て、関西に進学・就職した美由紀さんですが、浩太郎さんの熱い思いを聞くうちにふるさとの良さを改めて感じるように。そこで子育てのことも考え佐賀に移住したお二人ですが、「何せ農業経験なし、人脈なし、信頼なし、お金なし。ゼロからのスタートでしたね」と浩太郎さんは笑って振り返ります。
「経験のなさと持ち前の負けず嫌い精神が逆に生きた」とフォローする美由紀さん。平地の少ない太良町で農家として生きていくには何を育てればいいのか…そこで目を付けたのがアスパラガス。佐賀はアスパラガスの作付面積が全国9位に対し、生産量は2位。「技術力を活かせば、狭い場所でも高い生産量を生み出せる!」と山の斜面を切り拓きハウスを9棟設立。1棟ごとに栽培方法を変え、味や収穫量、経費、肥料などの変化をすべてデータ化し、試行錯誤の上、3年で理想のアスパラガスができあがったと言います。毎日が発見と分析の繰り返しだった「てっぺんとり作戦」と夫妻が語るこの方法はどのベテラン農家もしてこなかったこと。最初は「素人ができっこない」という意見も多かったそうですが、努力と熱意は徐々に周囲に認められ、どんどん人脈も広がり、噂を聞きつけ、アスパラガスも全国の一流シェフから引き合いが舞い込むようになりました。
安東夫妻のサクセスストーリーを熱心に聞き入っていた受講者たち。ゆでたてのアスパラを試食、そのジューシーな美味しさに「これがアスパラガス?」と驚く受講者も。
ワークショップではまず、数人のグループで「なぜ、安東夫妻が成功したか」のキーワードを挙げていきました。受講者からは「探求心」「自分が勝てる場所を理解」「異分野とのつながり」「試行と分析」「ワクワク感」といろんな言葉が飛び出し、「夫婦のバランス」とのキーワードに「そこが一番大切なんですよ!(笑)」と浩太郎さんが身を乗り出し、横でほほ笑む美由紀さん。浩太郎さんの直感を論理派の美由紀さんがどう形にするか導いていく、夫婦二人三脚の“方程式”があってこその成功だそう。続いて、受講者自身の強みや弱みを自己分析した上で、個性を活かし、夢を叶えるための“方程式”を考えていきました。
自分に向き合いキーワードを書き出していく受講者たちに、一人ひとり丁寧にアドバイスを行っていた安東夫妻。方程式は先人がつくった公式にあてはめていくものですが、まさに“自学自習”!自分にしかあてはまらない、オリジナルの方程式をつくるのはやはり史上初!発表会では「幸せな私になるための方程式」や「進む方向に迷った時の方程式」など、個性あふれる方程式が次々に登場しました。
この春、佐賀を離れる受講者も多かった今回の講座。佐賀大学農学部を卒業し、4月から福岡県庁の農林水産部に就職予定の谷本有紀奈さんは「不安でいっぱいでしたが、参加して自分の意思、やりたいことがしっかり確認できてよかった」とニッコリ。恒例の佐賀弁メッセージでは、福岡・北九州市出身の浩太郎さんの言葉を美由紀さんが通訳。「自分のつくった方程式ば、ちゃーんと信じて、前向きに頑張って生きてくんしゃい!」。アスパラガスをはじめ、佐賀県産のイチゴやデコポンを味わいながらの美味しい講座となりました。
安東浩太郎:1979年大分県生まれ、福岡県北九州市育ち。安東美由紀:1980年佐賀県太良町出身。就職先の大阪の不動産関連会社で出会い職場結婚。結婚の挨拶の際、訪れた太良町で自然・人・食に惚れ込み、移住を決意し脱サラ、農業の道へ。中山間地域のみかん廃園を切り拓き、アスパラガスの栽培・販売をスタート。夫婦二人三脚の経営や農業を中心とした地域活動が徐々に根付き「森のアスパラ」のファンは全国で約4,000軒に。2017年「佐賀農業賞最優秀賞」、2018年「さがラボチャレンジカップ優秀賞」を受賞。