特別講座14

「未来を描く文房具学」

-1日小学生社員、募集!-

オンデマンド講座(40分版)
 
超抜粋版

  • 講師
    • 小笠原恵子先生・中村恭一郎先生(三菱鉛筆株式会社)
  • 日時:2024年1月13日(土)
  • 会場:巨勢公民館

講座レポート

今回は、文房具好きの子ども達のための特別講座「未来を描く文房具学」です。講師にお迎えしたのは、三菱鉛筆株式会社の社員・小笠原恵子先生と中村恭一郎先生。どうして三菱鉛筆かというと、実は創業者である眞崎仁六(まさき・にろく)さん(1848―1925)は佐賀市巨勢町の出身。そして2024年は三菱の高級鉛筆「uni(ユニ)」が生まれて65周年、講座当日の1月13日は眞崎さんの誕生日という節目であり、記念日なのです。会場に集まってくれたのは、応募多数のなか抽選で選ばれた小学4~6年生まで30名の子どもたち。さあ、わくわくドキドキの“1日小学生社員”の研修がスタートです。

まずは、三菱鉛筆の入社式で実際に行われている鉛筆削りから。「鉛筆のように、しっかり芯を持ち、入社後も自分を磨き続けてほしい」という願いを込めたもので、新入社員は必ず通る道です。通常は小刀を使用するそうですが、安全面を考慮して子どもたちにはシャープナーを配布。全員が削り終わったところで、「入社おめでとうございます!」と先輩社員でもある小笠原先生がお祝いの言葉をかけてくれました。

続いては、クイズを交えながら三菱鉛筆の歴史を学んでいきます。ここでは、パリ万博(1878年)で鉛筆を見て衝撃を受けた眞崎さんが、10年間独学で研究し、日本で初めて鉛筆の工業生産に成功したことなどを紹介。子どもたちは、先生の話がクイズのヒントになるかもと、一生懸命メモをとりながら聞き入っていました。クイズは5問で、全問正解ならまさに鉛筆博士!皆さんも動画をチェックして、挑戦してみてくださいね。

ここで、鉛筆ができるまでの工程をちょっとだけご紹介。皆さん、鉛筆は木に穴をあけて芯を差し込んでいる…なんて思っていませんか?実は、木の板に芯が入る溝(みぞ)をつけ、そこに芯を乗せたらもう一枚の板で挟みます。つまり最初の段階では板状で、その後、鉛筆の形に一本一本細長く削られ、塗装されます。会場の一角には、分かりやすいように製造工程の一部が見本展示され、子どもたちはもちろん、保護者の方々も興味津々で眺めていました。

さあ、後半では品質チェックに挑戦です。HBを基準に鉛筆に濃さがあるのはご存じの通り。ちなみに「H」はHard(硬い)、「B」はBlack(黒い)の略。Hの数字が大きいほど芯が硬くて色は薄く、Bの数字が大きいほど芯は柔らかく濃くなります。まずは、同じHBで一般的な鉛筆9800と高級鉛筆ユニを書き比べてみます。子どもたちは「9800は紙に書いたら押し返されるような硬い感じ」、「書きやすさはユニの方」、「研ぐときから硬さが違う」など違いを実感していました。

次に、芯の硬度の違いを試してみようと、鉛筆だけで猫の塗り絵に挑戦。使うのは10H~10Bまで全22種類の硬度を揃えた「ハイユニアートセット」です。アーティストやデザイナーが使うような鉛筆セットで、なんと受講生全員にプレゼントされました。時間の関係で、最後まで仕上げることはできませんでしたが、子どもたちは夢中になって塗り絵を楽しんでいました。

最後は、“書く、描く”未来についてみんなで考えてみました。これからの文房具について思うこと、感じたことを文章や絵で表現してみよう!というもの。「算数の立体図形を描くのが苦手。3D鉛筆で立体図形を書けるようになったら算数が好きになりそう」、「居眠りをしたら弱い電流が流れる鉛筆!」、「1本で濃さや太さを調整できる筆記用具があるといい」など、子どもたちのユニークで柔軟な発想にあふれていました。

恒例の佐賀弁メッセージは、三菱鉛筆の企業理念でもある「違いの、美しか~」(本当は「違いが、美しい」)。同社では「生まれながらにすべての人がユニークである」という信念のもと、“書く・描く”を通じて、人々の個性と創造性を解き放つ「世界一の表現革新カンパニー」をビジョンとして掲げています。子どもたち一人ひとりの個性が違うからこそ、個性の美しさを尊重したいという思いを込め、メッセージを送ってくれました。

3D鉛筆などのアイデアを発表してくれた西郡希子さん(佐賀大附属小4年生)は、「鉛筆の濃さを変えて猫の塗り絵をするなど、すごく楽しかった。自宅に帰って塗り絵を完成させるのが楽しみです」と嬉しそうに話してくれました。講師を務めた小笠原先生は、「大人になると鉛筆を使わなくなってきますが、グラデーションの違いや五感を刺激する筆記用具としての魅力を知ってもらえれば、鉛筆の見方が変わってくるかも」と期待を込めます。また、「今回使用した猫のイラストの他にも、塗り絵用の素材が三菱鉛筆のホームページからダウンロードできるので、ぜひ楽しんでください」と教えてくれました。

文房具は、単なる道具ではなく、自分を、自分らしく表現できるツールです。今はまだ上手に伝えられなくても、心の中にある大好きなことや将来の夢。書くことや描くことで、佐賀の子ども達の未来が明るく彩られていくことを願っています。