19時間目

「発信学」

-キミが出す情報で世界を面白くしよう-

オンデマンド講座(40分版)
 
超抜粋版

  • 講師:藤吉雅春 先生(Forbes JAPAN編集長/鳥栖市出身)
  • 日時:2023年2月19日(日)
  • 会場:基山フューチャーセンターラボ

講座レポート

19時間目の講座のテーマは「発信学」。講師にお迎えしたのは、Forbes JAPAN編集長の藤吉雅春先生です。 雑誌「Forbes」はアメリカで1917年に創刊し、現在は世界40ヶ国で発行されているビジネス誌。日本版は2014年創刊で、「世界から日本に、日本を世界へ」をテーマに未来を切り拓くメッセージを発信し続けています。

発信学のプロともいえる編集長から直接話が聞けるとあって、会場には高校生を中心に26名が参加。なんとそこには、鹿児島県から来てくれた受講生の姿も。実は、 2023年「燃ゆる感動かごしま国体・かごしま大会」と2024年「SAGA2024国スポ・全障スポ」が、2年連続で九州開催となることから、様々な分野で両県の交流を深める「佐賀・鹿児島エールプロジェクト」を展開。その一環として、鹿児島県から3名が特別参加してくれました。

講座は2部構成で、まずは藤吉先生自身のこと、発信のコツや面白さについてのお話です。有名雑誌の編集長は、一体どんな学生生活を佐賀で過ごしていたのか。さぞかし、昔から文章がうまかったのだろうと思いきや、中学生時代にセンスを爆発させたのは”あだ名”を付けることでした。

「すごく嫌な先生がいて、授業中、メモ帳に似顔絵を描いてあだ名をつけて、クラスのみんなに回していた。とても評判がよかったんで、いろんな先生にあだ名を付けてました。」と藤吉先生。そして、高校生になって出身中学の近くを歩いていた時、たまたますれ違った後輩たちが、自分の付けたあだ名で先生の話をしていたそう。

「言い得て妙というか、ズバッと当たっているあだ名は、時間を隔てても語り継がれていくもんだなと思いました」。(笑)

一体どんなあだ名だったのか気になるところですが、そこまで浸透するなんて、多くの人が共感し、共有し、拡散したくなる情報だったということ。藤吉先生の発信力の原点は、あだ名付けにあったともいえるでしょう。

「発信の基本は、誰も気づいていないところを見つけ出すこと」と藤吉先生。「人を褒めるのであれば、相手が気づいていないところも探し出して、相手が驚くくらい褒める。アホになるんだったら徹底的に、愛されるぐらいのアホになって針を振り切らないと人には響かない。」大切にしているのはポジティブ・ジャーナリズム。立場や学歴などで人を判断するステレオタイプではなく、多くの人が気づかずにいる隠された本質を発見していこうというもの。そこには生きていくヒントがたくさんあるし、次に続く人たちのために可能性の扉を開くことにもつながります。

さあ後半は、発信力を磨くワークショップです。お題は、「超個人的な話が載っている極私的県民雑誌「週刊Dordes SAGA」(ドーデスサガ)※に掲載する、私だけが知っている面白い話を考え、そのタイトルを書く」というもの。タイトル作りのコツを伝授するため、藤吉先生は受講生たちが事前課題で提出していた「1分間で伝えたい面白い話のタイトル」を会場で添削。受講生が作ったタイトルを見ながら、「この先が喜劇なのか悲劇なのか、もう一言付け加えるといい」、「読んでもらいたい相手のことを考えながら書いた方がいい」「◯◯事件、◯◯問題など、身近な出来事を歴史上の事件のように固有名詞化すると可笑しみがでる」など、すぐにでも生かせるポイントを教えてくれました。

受講生たちは作り方のコツを踏まえたうえで、思い思いのタイトルを作成。その後、3~4人のグループになって見せ合い、周りの意見を参考にブラッシュアップ。渾身の一本を各自が提出し、その中から藤吉先生が3タイトルを選びました。

「驚き!学年上位の友達のゲームプレイ時間とは!」

「母方の家族のあだ名がおかしい問題」

「水の味の違いが分かるようになるための第一歩」

これらを中心に、全員分のタイトルが入った中吊り広告風のチラシをデザイン。それぞれのタイトルにどんな面白い話が紐づいているのか、「週刊Dordes SAGA」※が読みたくなってしまいました。

毎回恒例の、受講生への佐賀弁メッセージは「お題を毎回決めてやるとよかです」と藤吉先生。つまり、発信するにはテーマを決めることが大事で、日頃の生活のなかでタイトルをつける習慣を身につけていこう!と呼びかけました。

鹿児島県から日帰りで参加した、鹿児島修学館中学校2年楸田寛太さんは「受講生の皆さんの話が面白く、タイトルの付け方で印象が変わるんだなと思いました。実際に使えそうなコツを教えてもらって、いい勉強になりました。」と満足そう。

友人と二人で参加していたのは、三養基高校1年の松永乃愛さんと寺﨑莉乃さん。「母方のあだ名の話をタイトルにしたら選ばれて、ちょっと恥ずかしかったけど良かったです」(松永さん)、「発信学ってどういうことだろうって思ったけど、よりたくさんの人に伝えるために必要な知識を得られて良かったです」(寺﨑さん)。

講座を終えた藤吉先生は、「教えたことをちゃんと取り込んで、宿題で事前に提出してもらったタイトルより、ワークショップで作った方がみんな上手くてセンスがあった。考えるプロセスが理解できたら、誰でもできるようになるので、その手助けができたかなと思います」と振り返りました。そして、「若者が大人と触れ合う機会って意外と少ない。私は高校生のときに新聞記者の話を聞いて触発されたのを覚えている。若い時にどんな大人と出会うかって結構重要で、弘道館2ではそういう機会をどんどん与えてほしい」というメッセージもいただきました。

SNSやYouTube、面接やプレゼン、レポートなど、学生でも社会人でも、あらゆる場面で求められる発信力。自分の思いや考えを、より分かりやすく、魅力的に伝えられたなら、あなたの未来や目指す世界はきっともっと広がっていくはず。ありきたりのステレオタイプの表現は投げ捨てて、自分なりの発信力を磨いていこう!

※「週刊Dordes SAGA」(週刊ドーデスサガ)
この講座のために誕生した参加者みんなで創る極私的県民仮想雑誌

 

講師プロフィール

藤吉 雅春 / Forbes JAPAN編集長(鳥栖市出身)

藤吉雅春

佐賀県鳥栖市出身。Forbes JAPAN 編集部 編集長。著書『福井モデル - 未来は地方から始まる』(文藝春秋)は2015年、新潮ドキュメント賞最終候補作になった。
2016年には韓国語版が発売され、韓国オーマイニュースの書評委員が選ぶ「2016年の本」で1位に。2017年、韓国出版文化振興院が大学生に推薦する20冊に選ばれた。最新刊に『未来を「編集」する シンクタンクAPIの実験』(実業之日本社)がある。

 

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