14時間目の講座テーマは「雑学」。講師にお迎えしたのは、佐賀市出身でKADOKAWAノンフィクション書籍編集長の原孝寿さん。実は、人気クイズ番組への出演経験が豊富なクイズの達人でもあります。そんな原さんに教えてもらうのは「知る」ことについて。大切な知識の身につけ方を教えていただきます。
今回もオンライン開催となりましたが、講座の合間に原さんがクイズを出題するというお楽しみつき。解答方法は、YouTubeのチャット欄に答えを送る早押しスタイルで、最後の出題コーナーでは賞品をプレゼント!パソコンの前でワクワクしながら待っていた受講生も多かったはずです。(白熱したクイズバトルは、ぜひアーカイブをチェック!)
講師の原さんは、小さい頃からクイズ好きで、高校生のときには大人に混じってクイズ番組にも出演しました。当時の勉強法は、なんと辞書を読むこと。「正確に言うとインターネットが発達する前の勉強法ですが、本を読むように辞書を読んでいました」。クイズの問題集を読んで短期的に力をつけるのもいいですが、長期的に使える知識を身につけるなら、辞書や本を読むのが一番だと言います。
手元にスマホがあれば、なんでも調べられる便利な時代。わざわざ、辞書や本を読まなくても…と思ってしまいそうですが、「レコメンド機能(閲覧履歴や購入履歴からAIが分析しておすすめを表示)で、知らず知らずに自分好みのものばかりに触れている可能性があります」と原さん。そのため、他人の視点で編集された新聞を読むことや、さまざまなジャンルの本が並ぶ本屋に足を運ぶことは、世の中の動きや発想のヒント、刺激を受ける意味でもおすすめなのです。
本の読み方も、ただ漠然と読むのではなく、関心があることにこだわる“視点”が大事。例えば、言葉の使い方に興味がある原さんは、山口県で「フグ」を「フク」と読む理由を深掘りして、毒を持つフグがなぜ食べられるようになったのか、そこに伊藤博文が関わっているエピソードまで掘り下げていきます。情報や知識を教養レベルに高めていくには、なぜだろう、どうしてだろうと、もう一歩深堀りして読むことが大切なのです。
子どもたちにとってクイズは、考えることが楽しくなる遊びで、知らず知らずのうちに思考力や想像力が磨かれていきます。だからこそ、「クイズの要素を教育の現場に取り入れてもらいたい」と語る原さん。例えば、教科書を深堀りしてみるのも面白い。理科的な知識と歴史的な事件をかけあわせたクイズなら、学校の授業が多面的にわかれた教科ではなく、横につながっているんだと子どもたちに分かってもらえます。「同じ本を使って、みんなでクイズの問題を作ってみるのもいい。それぞれ視点が違うので、クイズに個性が出て面白いと思います」と、授業でのクイズの取り入れ方もアドバイスしてくれました。
実は今回の講座のために、原さんはクイズ仲間の人脈をフル活用して、クイズ王として知られる徳久倫康さんや数々のクイズ番組で活躍するカズレーザーさんなど、著名人の方から貴重なコメントを集めてくれました。クイズの世界はとても奥深く、そこで活躍する達人たちが実践する学びのコツは、ぜひとも真似してみたいものばかりです。
最後に恒例の佐賀弁メッセージをいただこうとしたら、「これだけは伝えておきたい!」と熱弁されたのが、“無知の知”を自覚することの大切さ。「どんなに物知りになっても、上には上がいる。慢心することなく、“自分にはまだ知らないことがある”という謙虚な気持ちを大事にしてほしい」と語る原さん。そのうえで、受講生たちに伝えたかったのは「知らんば始まらん!」ということ。知ることは、コミュニケーションや友達をつくるきっかけになるし、自分の世界を深めるきっかけにもなると佐賀弁でメッセージを送ってくれました。
学生から大人まで、みんなの知的好奇心が刺激された14時間目の講座。きっと多くの受講生たちが、知ることの面白さを改めて実感してくれたはず。だって世の中は、私たちの知らないことであふれ、新しいことに出会えるワクワクの連続なのだから!
1975年、佐賀市生まれ。佐賀西高校卒業。94年、広島大学文学部国語学国文学専攻入学。98年、株式会社角川書店(現・株式会社KADOKAWA)入社。シリーズ累計100万部を超えたNHK『ブラタモリ』の番組書籍をはじめ政治経済からアート、囲碁・将棋まで幅広い書籍の企画編集を担当。新書編集長、ノンフィクション書籍編集長を経て現在は編集委員として新しい書籍づくりに励む。趣味のクイズは高校時代にTBS「第6回史上最強のクイズ王決定戦」本戦出場のほか、「アタック25」優勝、BS朝日「クイズ モノシリスト」準レギュラー出演、フジ「99人の壁」3回出演(2回センターステージ)など出演多数。一般向けのクイズイベントの企画・構成も多く手がける。元・日本クイズ協会理事(17~18年)。