特別講座17

「絵で世界とつながる学」

オンデマンド講座(40分版)
 
超抜粋版

  • 講師:ミヤザキケンスケ 先生
  • 日時:2025年7月21日(祝・月)
  • 会場:佐賀商工ビル7階 大会議室

講座レポート

今回は、子どもたちのための特別講座「絵で世界とつながる学」です。講師にお迎えしたのは、アーティストのミヤザキケンスケさん(通称ミヤケンさん)。夏休みにあわせて、「オランダに届ける作品を一緒に描こうよ!」と呼び掛けたところ、なんと300名以上の応募があり、過去最高の倍率の中で選ばれた小学生25名が参加してくれました。会場には、絵を描くのが好きな子、海外に興味がある子などが集まり、始まる前からワクワク感が伝わってきます。

まずは、ミヤケンさんのお話です。見る人を幸せにする「Super Happy」をテーマに、制作活動を続けているミヤケンさんは、世界中で壁画を描く「Over the Wall」というプロジェクトをライフワークにしています。これまで、ケニアや東ティモール、ウクライナなど8カ国で、現地の人達と一緒に壁画を描いてきました。「一カ月くらいその土地で生活して、一緒にご飯を食べて、一緒に描いていると仲良くなれる。それが楽しくて活動を続けています」とミヤケンさん。

海外で活動するきっかけになったのは、高校2年生のときに2週間ほどベルギーに滞在し、ひたすらスケッチを描きまくったこと。当時、佐賀北高校の芸術コースに通っていたものの、周りの才能に圧倒され、自分を変えたいと思っての行動でした。絵と向き合う日々のなかで、言葉は通じなくても絵がコミュニケーションツールになること、人と仲良くなるきっかけになることに気づけたといいます。

弘道館2で、オランダに届ける絵を子どもたちと一緒に描くことになったのは、日本とオランダの交流425年を記念して、ミヤケンさんによる壁画プロジェクトが決定したこと。オランダにある焼き物の街、デルフトにある団地の建物に壁画を描くことになっています。佐賀県内の高校生3名も、夏休みを利用してオランダに渡り、壁画プロジェクトに参加します。高校生たちは、子どもたちの作業をサポートするため、今回の講座にもかけつけてくれました。

それでは、お楽しみのお絵描きタイム!といきたいところですが、まずはウォーミングアップで、「オンリーワンゲーム」にチャレンジです。「春といえば?」、「三角形のものといえば?」など、テーマにあわせて1分間で絵を描き、他の人とかぶらないオンリーワンを目指すというゲーム。春といえば、「おたまじゃくし」「桜もち」、三角といえば、「三角チョコパイ」「ショートケーキ」など、ユニークなオンリーワンが次々出てきて、会場は一気にリラックスしたムードに。「人と違うことは素晴らしい。絵は、人と違っていればいるほど魅力的になる」というミヤケンさんの言葉が印象的でした。

さあ、ここからは集中モードで、みんな裸足になって絵を描いていきます!使用するのは水性ペンキ。描くモチーフは、有田焼とデルフト焼、デルフト市民のルーツに関わる花、オランダの人たちに愛されている葛飾北斎の冨嶽三十六景をイメージしたものに、ミヤケンさんが必ず作品に入れるという太陽やバルーンなどをコラージュしたもの。用意された下絵をもとに、チーム分けされた子どもたちが、思い思いの色を片手に約2時間かけて描いていきました。

チーム分けは、花や焼き物などのカットを1~2人で集中して描くチームと、花や空など大きなモチーフをみんなと一緒に描くチーム。大きな刷毛で大胆に塗る子もいれば、小さな筆を使い分けて細かく描く子も。ミヤケンさんは、全体を見ながら各パートに向かって「青にもいろんな青があるよ」、「上手に描けなくていいから丁寧に」、「めっちゃいいじゃん!」、「最高!」など、いろんなアドバイスや声掛けをしながら子どもたちのやる気を引き出していました。

子どもたち一人ひとりの感性が、色になり、形となって、見る人たちをハッピーにするカラフルで鮮やかな作品が仕上がりました。まさに、一人じゃ絶対にできない、みんなとだから表現できた世界観です。描き上げた絵はオランダのプリンセンホフ博物館に飾られる予定で、壁画プロジェクトに参加する高校生たちがオランダに持って行ってくれます。

出来上がった大作を前に、やり遂げた達成感にあふれる子どもたち。一人で壺の絵柄を担当した神埼小学校6年生の渡邊瑠唯(わたなべるい)さんは、「絵を描くのが好きで、いつもはA4サイズの紙やタブレットで描くのがほとんど。こんなに大きいのも、ペンキを使うのも初めて。絵柄が細かくて難しかったけど面白かった。海外にも興味があって、オランダに届けられるのが楽しみです」と満足そうな表情。瑠唯さんが描いた壺は「クオリティが高い!」とミヤケンさんからも絶賛され、母親の万里子さんは、「間に合わないんじゃないかと、ハラハラしながら見守っていました(笑)。家でもいつも絵を描いているので、とてもいい経験になったと思います」と、保護者の方々にとっても子どもの成長を垣間見る貴重な時間になりました。

恒例の佐賀弁でのメッセージは、「この世界は、がばいふとか宝島ばい。勇気ばもって世界にひっとでんしゃい!(訳:この世界はでっかい宝島。勇気をもって世界に飛び出せ!)」。
ミヤケンさんは、「僕が一番好きなアニメはドラゴンボール。海外に行くのは不安もあるけど、なんにでもワクワクして挑戦する悟空になりきったら、きっと楽しいと思えるはず。みんなにも、勇気をもって一歩を踏み出して、海外に興味を持ってほしい。いつか必ず日本を出て、世界を見てほしいです」とメッセージを送りました。

講座を終えたミヤケンさんは、「初めて会った子どもたち同士も、絵を描きながら交流できたみたいですごくよかった。県内の高校生を壁画プロジェクトに連れていくのも、弘道館2に講師として出演するのも、地元でやりたかった取り組みの一つでした」と感慨深げ。実は、弘道館2の一回目の講師である画家の池田学さんはミヤケンさんの先輩で、「いつかは自分も」と心の中で目指していたそう。それだけでなく、何を隠そう弘道館2とミヤケンさんは切っても切れない関係にあります。講座のオープニングで必ず登場する、佐賀の子どものキラキラした目のイラストは、ミヤケンさんが6年前に描いてくれたものです。

今回参加してくれた子どもたちの目が、このイラストのようにキラキラと輝いていたのは言うまでもありません。絵を通して世界とつながる、一生忘れられない思い出になったことでしょう。ミヤケンさんの海外でのお話を聞いていると、その場所でしか出会えない景色や文化、日本では実感がわかない戦争や貧困など、世界は知らないことであふれているんだと気づかされます。でも、見上げた空は一つにつながっているし、みんな同じ太陽に照らされています。広く大きい世界も、自分が動けばグッと近くなるはずです。第2、第3のミヤケンが、佐賀から世界へひっとでることを期待しています!

 

Over the Wall 帰国報告会

今回は、子どもたちのための特別講座「絵で世界とつながる学」の“その後”をお知らせする番外編です。

10月16日、「絵で世界とつながる学」で講師を務めたミヤザキケンスケさん(通称ミヤケンさん)の「Over the Wall 帰国報告会」に参加してきました。「Over the Wall」とは、アーティストのミヤケンさんがライフワークにしている世界中で壁画を描くというプロジェクト。これまでケニアや東ティモール、ウクライナなど、貧困地や紛争地など様々な社会問題を抱えながら、それを乗り越えようとする人々と一緒に壁画を制作してきました。弘道館2でも、「一カ月くらいその土地で生活して、一緒にご飯を食べて、一緒に描いていると仲良くなれる。それが楽しくて活動を続けています」と、生き生きとした表情で子どもたちに話してくれました。

9カ国目となる今回の舞台はオランダです。日本とオランダの交流425年を記念した企画で、佐賀県とオランダには焼き物を通じた歴史的なつながりもあります。いつもならミヤケンさんを中心としたチームで取り組むプロジェクトですが、今回は特別に2つのミッションがありました。一つは、佐賀の高校生たちが現地制作に参加すること。もう一つは、弘道館2で佐賀の小学生たちが描いた絵をオランダの博物館に届けることです。

ミヤケンさんは自身が高校生のとき、ベルギーに2週間ほど滞在してスケッチを描き続けたことが人生の転機になったため、佐賀の子どもたちにも海外で経験するチャンスを作ってあげたいとずっと考えていました。その想いに応えるように、県がプロジェクトに協働し、令和7年度オランダ青少年派遣事業を実施。県内の高校生約80名の応募の中から選ばれた、酒見こころさん(3年)、舩津心美さん(1年)、楢﨑聡さん(1年)が、夏休みを利用してオランダに渡り、壁画プロジェクトに参加しました。彼らは7月21日に行われた弘道館2の「絵で世界とつながる学」にもかけつけてくれて、子どもたちの作業をサポートしてくれました。

報告会では、「共生」がテーマの壁画制作の様子をミヤケンさんが写真や動画と共に紹介。壁一面に描かれたのは、有田焼とオランダのデルフト焼を融合させた大きな花瓶に色とりどりの花、葛飾北斎の「神奈川沖波裏」をモチーフにした海や、個性的な太陽と佐賀ならではのバルーンまで!思わず足を止めて見入ってしまうインパクトと、見ているだけ元気がもらえそうなカラフルな色使いです。とっても素敵だけれど、なんだかどこかで見たことがあるような…。そう、弘道館2で子どもたちと一緒に描いた絵とリンクしたデザインなのです!

佐賀の小学生たちが描いた絵は、デルフト・プリンセンホフ博物館に無事届けられました。博物館はデルフト市の中心街にあり、本館は現在改修中で立ち入りができないため、隣接するコミュニティセンターの出入り口に設置。ミヤケンさんと佐賀の小学生25名が描いた作品であるという説明書きも、ちゃんと添えられています。

「壁画は、デルフト市の中でも多様なルーツを持つ人々が暮らす集合住宅の壁に描いています。ただ、市街地から離れた奥まった場所なので、たくさんの人に見てもらえる博物館の絵とあえてデザインをリンクさせています」とミヤケンさん。弘道館2の講座に参加した子どもたちには、「オランダの博物館に展示されるなんてなかなかないことなので、機会があればぜひ観に行ってほしい」とメッセージを送ってくれました。

報告会では、プロジェクトに参加した3名の高校生がオランダで体験したこと、感じたことを、それぞれに発表してくれました。途中にクイズやゲームを盛り込むなど、場を和ませる工夫もいろいろ。最後は、「プロジェクトに参加して視界が広がり、自分の可能性も広がった」、「これからもっとたくさんの世界を自分の目で見てみたい」、「オランダ(世界)から佐賀を見たことで、ささいなことを気にしすぎていたことに気づいた」など、堂々とした発表に大きな拍手が送られました。ちなみに、会場には「絵で世界とつながる学」に参加してくれた小学生と保護者さん達の姿も!海を越え、オランダへ渡った大切な絵の行き先をしっかり見届けてくれました。

報告会の中で印象に残ったのは、高校生たちがオランダでミヤケンさんに伝えた「こんなにも自分たちのために、一生懸命やってくれる大人がいることを幸せだと思いました」という言葉。高校生たちの現地での作業時間は正味4日間。ハードなスケジュールのなか、大人たちの期待に応えようと、自分たちにできることをフル回転してやり遂げた3人。そんな3人のために、何ができるかを考えて行動し、サポートし続けた大人たち。共に過ごした日々は、それぞれの人生にとって忘れられない特別な時間になりました。

佐賀から世界に飛び出たことで、広がる未来の可能性に気づけた高校生たち。弘道館2も、佐賀の若者たちが好きなことを見つけ、自分の人生を思いっきり生きていけるような、“きっかけ”が見つかる学びの場であり続けたいと思っています。

 

講師プロフィール

ミヤザキケンスケ 先生

1978年佐賀市生まれ。Super Happyをテーマに、見た瞬間に幸せになれる作品を制作。現在、世界中で壁画を残す活動「 Over the Wall 」を主宰。ケニアのスラム街、東ティモールの国立病院、ハイチでの国境なき医師団との共同制作、パキスタンの小児病院など現地の人々と一緒に壁画を残す活動をしている。