初めての鹿島開催!しかも会場は祐徳稲荷神社内の畳の間。緻密な技術が生きた欄間や木を格子型に組んだ天井など、各所に美しさが見られ、歴史の息遣いも感じる空間は、今回のテーマ「右脳と感性を磨く術」にピッタリ!講師は鹿島出身の井上英明先生。“日常に花を”をコンセプトにした花屋「Aoyama Flower Market」を全国、海外に展開するほか、カフェ、スクールなど花や緑をベースに幅広くビジネスを展開されています。会場には教科書となるバラの香りが広がり、リラックスした雰囲気の中、講座がスタートしました。
ワークショップは5つと盛りだくさん。「バラを細かく観察することで、ものを見る力が身につき感性を豊かにする」と井上先生。まず、受講者たちはバラを見ずにスケッチを行った後、井上先生が開発した接写用レンズをスマホにつけ、自分が美しいと思うバラの部分を撮影していき、「香りを写真で伝えたい」「葉脈に生命力を感じる」「おいしそう」と感心しきり。「花びらだけじゃなく、葉や茎、ガク、トゲすべての要素がバラをつくっている。一輪のバラからどれぐらいの情報を得られるかがポイント」と受講者に声をかける井上先生。受講者たちは夢中になってバラをさまざまな角度から撮影していました。
スケッチの段階では、ほとんどの受講者が正面からの花の絵を描いていましたが、「意識してバラをいろんな角度から見ることで、みなさん感性のスイッチが入りましたね!」と井上先生。3つ目のワークショップではバラを解体。花びらを一枚一枚はがしていく受講者たちからは「10枚ぐらいだと思っていたけど50枚もあるとは」と驚きの声が上がりました。バラ観察で見る力を身に付けた受講者たちの次なる課題はフィールドワーク!神社内で美しいと思うものを見つけ、写真撮影してみんなの前で発表していきました。井上先生からは「何これ?」と質問が連発。「美しいと思うもの、感性はみな違うので、人に合わせなくていい。自分に響いたところに自信を持って」とエールも送ってくれました。
「感性は最初に視覚、そして嗅覚、聴覚…と磨かれていきます。いずれも意識することが大切。今日は視覚に対するスイッチは完全に入ったんじゃないかな」と語る井上先生が、急きょ用意した5つ目のワークショップは、なんと佐賀の水と外国の水、九州の醤油と全国一般の醤油を銘柄隠しての飲み比べ。味覚の感性を鍛えるための入り口です。水では受講生23人中、19人が佐賀のものを当て、拍手が湧きました。
「佐賀に生まれ育ち良かった。自然から五感が鍛えられるんです」と井上先生。「都会はどこも直線だらけ。自然界の中には直線はひとつもないんです。佐賀は自然に花が咲いているので、花屋はいらない。みんな佐賀は何もないというけれど、人間が本能的に求めるものすべてがあるんです。大体、水道水が飲めて、飲める水でお風呂入れるって相当ぜいたくですよね(笑)」と笑いを誘いつつエネルギッシュに語ってくれました。
Q&Aで「感性を磨くには日常的に何をしたらいいか?」の質問に、「毎日自己破壊すること」と即答した井上先生。「コンビニに行ったら同じドリンクではなく、全部のドリンクを飲んでみる。すると引き出しは増えていきます。まずいラーメンを食べても損と思わず、体験による情報が増えたと思ってください。基本的に同じことをやらないこと」との答えに深くうなずく受講者たち。最後に佐賀弁でこう締めくくってくれました。
「何の為に生きるか、人生の楽しみをもう一回考えてほしか。毎日小さくていい、自分を壊しながら、自分を高めていってほしか。今日の講座が楽しかったらそれは成長したってこと。楽しい、嬉しいという感情の裏には必ず感性が働いとるっちゃんね。失敗は悪じゃないけん、いろんな角度から山に登っていってんね」。
短い講座時間にも関わらず、濃厚な体験を通じた後の受講者たちの瞳はバラのようにキラキラ輝いていました。
鹿島市出身。鹿島高校卒業、早稲田大学卒業後、渡米しニューヨークの大手会計事務所に入所。帰国後1989年にフラワービジネスに参入、“Living With Flowers Every Day”をコンセプトとしたフラワーショップ「Aoyama Flower Market」は国内103店舗、海外2店舗を展開。フラワースクール「hana-kichi」、カフェ「TEAHOUSE」、室内緑化「parkERs」も手がける。趣味のトライアスロンが高じて専門の会社「ATHRONIA」も運営。右脳と左脳を使い分け、ビジネスマン、クリエーター、アスリートと多彩な顔を持つ。